前橋市庁舎(坂倉建築研究所在籍時担当作品)

執務空間の配置計画として高層棟は、省エネルギー上西陽の負荷軽減と、この地方特有の風害に対する考慮により、東西軸を設定、図書館と小学校がある東・南側の環境的な連続性などを考えると共に、メンテナンスや防災、風と熱のプロテクター、自然採光と自然換気によるパッシヴエネルギーの考え方を導入、スペースのフレキシビリティなどから大スパン構造による対称形のコアとバルコニーのプランが機能的であるとの結論に至った。
高層棟は、執務空間のフレキシビリティの対応として、合理的な構造計画の裏づけを得た無柱の広い空間を積層するつくりとすることとした。人々が移動する廊下や階段からも、最小限の幅の連続するスリットによって、コア部分への自然採光と共にパノラマミックな水平の景観が目の高さに据えられる。耐震壁に見えるコア部分にスリット窓を開けることで構造的な工夫と眺望、外観に特徴をもたせることができた。最上階には、市民が展望と憩いを楽しめる「市民フロア」を設けた。
低層階の屋上庭園は上毛三山(赤城山、棒名山、妙義山)が構成する周辺の景色へと自然な連続性を感じさせるつくりで、低い植栽で造景する構成とした。低層階の空間構成は街路と同じ床レベルに続く広い1階の市民ロビーを中心としている。その中央にあるガラス箱状の発光体のようなつくりは、市民課と福祉課を視覚的に遮蔽するために、一般の市役所のような「コア」(階段、水まわりの諸室など)状の壁にせず、光を採り入れながら視覚的に遮蔽できる反射ガラスを両側の開口部に設け、自然光による明るい執務室を可能にするための仕掛けとした。動線上は上下階2本の渡り廊下を設けた。南と北の歩道から互いに見通せる透明性の高い空間とし、庁舎の解放性と地域の連続性を強調し、この空間内部の焦点に緑と光の庭を切り込む形の「光庭」を挿入、「光行灯(ひかりあんどん)」の効果を実現した。光庭の1階の地表の緑は、食堂のある地階に向かって緩やかなカーブを描いて自然光と緑を地階の食堂へと導いている。
【建物名称】 前橋市庁舎
【所在地】 群馬県前橋市
【竣 工】 1981年
【用 途】 庁舎
【敷地面積】 5,956.01㎡
【延床面積】 21,517.60㎡
【構造・規模】 SRC造一部RC造
地上14階地下2階塔屋1階
【受賞】 ・BCS賞
・日本照明学会賞